26年度 東北スタディーツアー報告(その4)

 バスは女川町に入りました。

この町も、3月11日信じられないほどの大きな津波によってたくさんの人々の「いのち」と、昨日までの何でもない平凡な生活のすべてを失ってしまいました。女川町の産業は、漁業並びに加工業と観光そして女川原発でした。

あの日、町は震度6弱の揺れに見舞われると共に、約14メートルに達する巨大な津波に襲われて壊滅的な被害を受けました。後日、NHKが分析した「ビッグデーター」などを見ると、震災直後、女川町からは発信されたはずの様々な微小な通信データはすべて消えてしまい情報が全くなくなってしまった時間(ブラックアウト)があったことが見えてきました。

 

 災害当時の町の人口は約1万人でした。そのうち死者572名、死亡認定者255名(26/7/23現在)という人的被害がありました。物的被害は数えることもできない数でした。多くの報道で紹介されたように港周辺部に立っていた鉄筋コンクリート建築のビルが地震による揺れで起きたとみられる液状化現象と、その後、襲った津波によって土台部分をさらわれて横倒しになるなどの世界的にも珍しい災害が発生しました。多くのビルは解体されましたが、現在残っているビルについては「震災遺構」としての保存が検討されているようです。

 

 隣の南三陸町などと比較すると町の復興は、ほぼ計画通り進んでいるようですでに最初の復興住宅(200戸)が完成し入居が始まりました。津波で鉄路ごと流されてしまった女川駅も27年3月の完成を目指して工事が進んでいるようです。新しい町は基本的に沿岸部から高台に移転して、駅周辺を囲むように作られるようです。

 

 私たち(ZSVN)は、この女川町で活動しておられる八木さんのグループを支援させていただいています。震災直後から特に被災した女性をサポートする活動や、壊れてしまった地域のコミュニティーの再生と、何よりも生活してゆくために必要な「仕事創出」の活動に取り組まれている八木さんと2011年秋に知り合うことで始まりました。

当初は、ボランティア団体として活動をされていました。2013年に一般社団法人「コミュニティーハウス・うみねこ」となりました。八木さんを中心とするバイタリティーあふれるおばちゃんチームの力で旧女川女子高校の近くから現在の新しい活動拠点へ引っ越しをされました。

私たちは、「たいやきプロジェクト」という活動を持っています。うみねこハウスが「さんま焼き㏊たい焼き」を立ち上げたいということで技術指導をさせていただきました。

 さらに支援力を高めることでZSVNが座間市社会福祉協議会へつながせていただき、うみねこハウスが取り組んでいる「布草履製作」の材料となるTシャツの回収と送り込みを続けさせていただいています。

3年前から 中高生ボランティア活動の場を提供していただき参加者が自分たちでも被災地に役立つ力になることが出来るのだという体験や、被災された方との交流をさせていただき「語り部」の方から災害当時の話を聞かせていただき社会貢献の在り方の学習の場として活用させていただいています。

 

 今年は、新しくなった「夢ハウス」へ入りました。町から少し離れた高白浜という地区で被災した28戸の集落の中で1戸だけ残った建物を、たくさんの支援者の方々の力で再生して活動の拠点とされました。

昨年は、この建物は納屋のような状況でした。私たちは、津波で荒らされた斜面の開墾や大きな石の除去をさせていただきました。

昨年、参加した生徒たちは、到着と同時にわれ先に活動した場所に飛び出して行き、見事な畑に代わった姿に歓声を上げていました。きっと、役に立てたという実感を得たと思います。しかし、この入り江を見てもまだまだ整理が進んでいません。しかし、八木さんのパワーで新しい集落の再生が実現するものと思います。

 昼食は、夢ハウス特製の弁当を全員でいただきました。その後、八木さんから当時の状況を話していただきました。また、奇跡的に生還されたばあちゃんからもその時の話を聞かせていただきました。

 

 その後、八木さんのガイドで、波止場前のビルが横倒しになっている場所を見学し、医療センターまで階段を使って上がりました。医療センターの海が見える場所に建立された慰霊塔にお参りをさせていただきました。

その後、医療センターの玄関の柱に表示されているここまで津波が上がってきましたという表示を各自で見てくるように解散しました。生徒たちは、海面高が今経っている約13メートルの高さになったという感覚がわいてこないようでした。津波の波の先がここまで来たのではなく、目の前に広がっている海の面がここまでせりあがったということを説明しました。

 医療センターの裏側を見るとずっと先に運動場や学校などの建物が見えます。昨年秋に見たときよりも建物の高さが低くなっているように感じましたが、よく見るとかさ上げが始まり地面が高くなったことでこのように見えたのでした。来年の春が楽しみになってきました。また、この場所には秋にお邪魔すると思います。

 

 バスに戻って、八木さんがスペシャルな場所へ連れてゆくよということで「高政」さんの新しいお店に連れて行ってくださいました。知る人ぞ知る「笹かまぼこ」の名店です。ようやく再建がなってきれいなお店になっていました。生徒たちは「手焼き笹かまぼこ」に参加して楽しんでくれました。

八木さんとお別れをしてバスは今宵の宿である「エルファロ」に向かいました。雨は収まりましたが風が強くなってきました。今日も、気仙沼から女川まで長い道のりでした。お疲れ様でした。おしゃれな建物でゆっくりと休んでください。