9月5日。座間市との協働事業で取り組んでいます「市民防災・減災講座」基礎コースの最終回を座間市公民館で行ないました。第1回目は、5月16日の夜に行ったのですが、もう9月になってしまった・・・月日の流れの速さをしみじみと感じました。
受講者は20名とコンパクトな講座でしたが、一番進めやすい人員です。
私たちの講座のテーマはいつもの通りです。「生き残らなければ何も始まらない」ということを基本にして、地震が起きてからの3分間、3時間、3日間 それぞれどのような行動をとるのか、一人ひとりに考えていただき(書き出し)それをテーマにグループで、自分(たち)がとることができる行動の範囲の確認をしてもらいそこから災害を「自分のこと」として見つめなおしてもらおうとするものです。
「緊急地震速報」を鳴らしましたが、反応はいまひとつ芳しくないようでした。保育園児のような瞬時の対応ができないことに危機感を持ちました。受講者の年齢の関係もありますが、これでは心もとないと感じました。
毎年、9月1日を中心にTVは流行病のように、防災特番を流します。その影響があるのではないかと危惧しています。多くの番組は、大学の著名な先生方をメインに据えて、様々な方向性から組んでいます。
でも、私には、編集者自身が災害の行動分析ができていないように感じます。TV番組製作者は「自分はスーパーマン」だと思っているのではないでしょうか。そもそも論を申し上げるときりがないのですが。
先ずは、その瞬間に生きるための行動を自主的に、どれだけ素早くできるか。緊急地震速報を信じ切る。緊急地震速報はオオカミ少年的な部分があったことは否定できませんが、このところの速報の当確率は3・11のころよりも格段に改善され、約80%程度まで精度が高まってきています。しかし、これとて「絶対的」なものではなく地震学者の先生方や気象庁も試行錯誤をしているというのが現状です。
しかし、地震予知よりも確実です。地震は予知できたとして、その地震に対して起きないようにすることはできません。地震予知については研究が行われていますが、その見通しにはめどが立たないというのが現実で、いま言われているのは、大地震周期説が限界だといわれています。
したがって、これらのテーマを捉えるときには、何よりも視聴者に見てもらう順序は、①家屋の耐震または、最低限日常生活空間の安全確保。②家具類(含むTVと大型家電)の固定、③シェイクアウト行動に確実な実行 これが、原点だと思うのです。
この視点が抜け落ちていて「何をそろえる、備蓄すべきか」「どのように避難すべきか」「避難所は・・・」のレベルから話が進んでゆくことに納得が行かないのです。
一番は「わが身と、そばにいる家族の「いのち」を守る行動」の実践だと思います。
講座でもワークショップを通じて、このことを自らが認識して行動できるように展開していますが・・・なかなか、難しさを感じます。今日の講座でも、書き出しが始まると、《机やテーブルがつぶれていないかを確認してからもぐる》と書かれた人がいました。どう説明しても理解してくださいませんでした。
理屈ではごもっともです。でもそれを確認する前に、《あなた》はどうなるのですか? いや、「私は大丈夫なのだ。」と言い張るわけです。
時間に制限のある講座です。グループのほかの方々の進行の妨げにもなるので結果として「無視」せざるを得ないことになってしまいました。申し訳なさがありましたが…同じことでは、「地震だ火を消せ」という教訓があります。
説明がくどくなりますが、関東大震災を引き起こした原因は火災でした。東京大学の大森房吉教授と今村明恒教授との論争にもありますが、今村氏が大規模地震は周期的に来る。被害を抑えるためには灯油ランプの使用やめて、電燈の普及を呼び掛けました。今でいう「減災」の必要性を呼び掛けたのですが、大森氏は人心を惑わすような周期説は浮説(デマ)であるということを発表したことから論争が持ち上がりました。この話は有名です。結局、大森教授は震災後数年のうちに亡くなりました。その教訓から「地震即火を消せ」が出たのは事実です。
しかし、現代社会では、難燃性住宅の普及、インフラの安全装置の進歩は著しく「無理に火を消す行動によって二次的に引き起こす熱傷のほうが怖い」「ガス器具類は震度5クラスの揺れで自動的にロックがかかる」ようになっています。
したがって、余裕があれば消すことを否定はしませんが、わざわざ火を消す行動をとらずに、むしろ火から離れて、身を守る行動を優先にすることが一般的な考え方になっています。しかし、これについてもしつこく「私は火を消せと教えられた」「いつ変わったのか」という式に食いついてくる方もいます。これは結構多いのです。
でもこのようなことがあっても、とにかく①命を守り(自助)ついて、我が家の被害を確認して火が出ていれば初期消火。余震から身を守るために周囲の安全確認をしてガス、電気のブレーカーを切って外に出る。
②《向こう三軒両隣》への声掛けをして一時集合場所へ集合し近隣の安否確認を行い、集まった人で次を考える(隣助)ということを伝えました。
ワークショップでは、受講者はたくさんのことを思い浮かべてしまって、意見をいう(書き出す)方がいます。つまり、大規模地震の揺れの想像ができない(多くの人は3.11の揺れが最大値と思いこんでいる)、インフラが崩壊するということがイメージできないということなのですね。そして、自分の住んでいる場所の災害についてのリスクを認識していないのです。また、時間の量と行動の量の関係が結び付かないのですね。
これは、私たちの、講座の構成に問題があるのかもしれません。これは今後の課題にしてゆきたいと思いました。
講座の後半は、座間市安全防災課の職員から、座間市の地域防災計画の概要を、重要と思われる点をピックアップしてお話がありました。行政も最近は、「市民の責務」という形で「自助の強化」について話してくださるようになりました。
講座のまとめは、「生き残らなければ何も始まらない」ということの確認、行政職員も自宅に帰れば一般市民。災害の時には、公務員としての責務を感じていも、その行動には限界があるということを知ってほしい。結局は、発災後の最低3日間から5日間は、自分または近隣の方々で協力しながら乗り切るしかない。
その乗り切るための要点は「出す」・「食う」・「飲む」そして「電力の確保」(情報や明りの確保のため)の4点が大切で、「備える」を考える基本は、この4つに絞られることを話しました。
そして、日常の生活の中にあっては、「かかわる」ことの大切さについて日常の生活を振り返ってそれぞれの行動を見直してほしい、ということをお願いしました。何よりも大事なのは、「日ごろからのご近所とのあいさつ」なのかもしれませんね。
受講された方が、今日の学びの中から一つでも「行動に変えて」くださることを願ってやみません。
ZSVNのメンバーは、約10名も参加して講座を支援させていただきました。ご苦労様でした。
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