座間市小学校教育研究会 安全指導部研究会からの依頼をいただき、市内11の小学校の安全部員の先生方27名へ「学校における減災・災害対応と防災教育の方向性」について講座をさせていただきました。
この部会からは、2011年の秋にもお声をかけていただきましたので5年ぶりの研修会になりました。参加された先生方の中には、すでにPTAの成人委員会の防災講座や、先日のキックオフの時に参加されていた先生もおいでになりました。
私たちの団体の存在をご存知だった先生方は、約5名ということでまだまたマイナーリーグなのかということを確認させていただけました。
テーマは、大人たちのミスで子どもたちの「いのち」を失わないためにということを底流において進めさせていただきました。折から、石巻市の大川小学校の悲劇に裁判所からの判決が下りて、双方が納得に至らずに上告という結果になりました。このことをことさら教員の責任ということではなく、日ごろからの災害に対する取り組みが形式的だったことに端を発していることではなかったか。反対に、釜石東中学の対応は、別に「奇蹟だはなく」生徒たちは、「平時」の訓練をそのまま実行できた(「自助」の実行)ということを合わせて話をさせていただきました。
残念ながら、東北の被災地にお立ちになった先生がいらっしゃらないことを意外に感じました。
少なくとも、座間市で災害が起きた時に、教員の判断ミスによって子どもそして同僚に不幸が起きないことを真剣に考えておかなければならないことを話しました。
従来の「防災」という焦点が定まらない「言葉」に対して東日本大震災の被災を体験された学校から様々なとりくみがなされてきました。それらを踏まえて、各種研究会や学会などから新しい視点が示されました。
それは、災害を「予測する」こと。そして、その「予測」に対してあらかじめ必要な手を打っておく。すなわち「予防」という考え方が示されています。
その事象が「予測」の中で納まれば「災害」は起きないということになります。
万一、「予測」を超える事象が起きた時には「予防」できなかったわけですから、災害となるわけです。災害が発生すればその規模に応じた「対応」をしなければならないことになります。
この「予測」➡「予防」➡「対応」の全体を考えることが「減災・災害対応」ということになるという流れが定着し始めていることもお伝えしました。
今までの、Disaster から Resilience に変わりつつあるのです。
大事なことは、地震とテロ以外は「予報」があるということで対応が取りやすいということを知って置くこと、逆に、地震とテロは予報がないので確実に「いのち」を守る行動がとれるように知ることが、防災教育の入り口であることにも触れました。
幸いにして座間市は、24年度から神奈川県最初の「シェイクアウト行動」を取り入れた「市内いっせい防災行動訓練」に取り組んでおりその意味では、近隣他市と比べても首一つ抜きんでいることも話しました。
先生方が地震災害に対応するためにどう行動できるかを判断するためのワークショップをさせていただきました。
本来であれば少し深く行いたかったのですが、時間に制限がある関係上このような「手法」がありますよという体験をしていただく範囲になりました。それは、私たち仲間の中では普通になっています東京大学の目黒教授の開発された「目黒巻き」です。
今回は、都心南部直下地震を想定して、発災直後の想定をシナリオとしてテロップで流し映像と共に災害イメージを持っていただきました。緊急地震速報が午前11時に発報したことを想定して発災直前、直後から、24時間をイメージしてタイムテーブルにご自分が取るだろうと思われる行動を箇条書きで書いていただきました。
差し上げた時間が10分間という短い時間でしたが、お書きになっている様子を拝見しますと、頭の中では、教室の中のの情景を浮かべたり、校舎内の被害などを思い浮かべているのだと思いますがうまく文章…すなわち具体的な行動としてコメント化できないようでした。
そのもどかしさの要因は、災害を「自分のこと」として確実にとらえきれていない。だから自分の行動が明確化できないことにあるのです。あれもこれもと考えるとどうにもならないわけです。
トイレの準備をしなければ・・などとおっしゃる先生もおられました。
確かにトイレは大事でしょうが…まずは児童の身の安全の確保(「いのち」)が最優先なのですね。教室内で何が起きるのかということが自分の教室内に起きるのだということがイメージされていないのだと思います。
これはそう簡単に習得はできませんが大事なことなのです。
普段から、「重要性」と「緊急性」の秤を持って、今はどちらに傾いているのかを確実にとらえることが大事だと感じました。
多くの先生方は3分から3時間の間で悶々とされていたようです。
その後、約15分フリーに意見交換していただきましたが、「いやー。書き出せませんね」「頭の中ではあれもこれもと思い受べるのですが、何が優先されるのか判断できないですね」というような正直な意見が交換されていました。
3分間という時間の長さ(短さ)を体感していないこともあります。同じく3時間を児童を安全確保する作業量もイメージできないようでした。
パニックになっている教室内で児童を自分の方を向かせるにはどのようにするのか?
血を流している児童を思い浮かべてその対応をどうするのか?
しかし、課題が山積していることは理解していただけたようです。
防災教育というのは、先ず先生が明確な災害のイメージを持って取り組まなければ子供たちへ伝わりません。しかし、30年間の発生確率が70%を超えているといわれています「首都南部直下地震」に確実に巻き込まれる児童へ何をするべきなのか、自分は何ができるのかということを真剣に考えてほしいということを話しました。
この目黒巻きは、場所と時間の想定を変えることによって様々な変化をもたらせます。
しかし、どの状況にあっても時間軸で対応を考えることが求められることが浮かんできます。どうか、学校ごとに備えられる「防災対応マニュアル」の中に、タイムテーブルを明確にしたシンプルなものを作っていただければよいのではないかということをお話させていただきました。
最後に、災害の時に市役所が、県庁が何とかしてくれるということは現実にはあり得ないのです。これは行政が悪いのではないのです。平時の行政業務を超える事態が起きてしまうわけですから当然のことなのです。であれば、最初に戻りますが、学校における「自助」が強く求められることになるのだと思います。従来の、研修とは異なる視点での話で先生方も戸惑われていたようですが、ささやかですが被災地、被災者さらに災害救援ボランティアとして実地を通じて学んできたものの感想をもとにした講座にさせていただきました。
お疲れさまでした。
ぜひ、11月26日の「体験型 減災・災害対応訓練」へ参加してほしいと思います。お待ちしております。
コメントをお書きください