ざま災害ボランティアネットワーク(ZSVN)は、社会デザイン学会(会長:北山晴一氏)http://www.socialdesign-academy.org/ より2017年度 学会奨励賞をいただきました。
12月10日、立教大学で授賞式があり会の代表が出席して表彰をいただきました。
今年度の大賞には、「水俣学」で有名な 花田昌宜氏(熊本学園大学教授)が奨励賞には、水島 俊彦(法テラス 八戸法律事務所 代表弁護士)、永岡 鉄平(株式会社フェアスタート 代表取締役)、団体としてざま災害ボランティアネットワーク(ZSVN)が選ばれました。
当会の授賞の理由は、「神奈川県座間市で<地域>を基盤に市民によって設立(2008年)された災害ボランティア団体である。地域では、市民向けの防災・減災セミナーなどを座間市より受託して担う一方、ZSVNが座間市へ提案した、行政と協働した防災訓練(座間市いっせい防災行動訓練 シェイクアウト訓練)の推進・啓発を2013年度から開始し、市民の高い訓練参加率を得ている。
このような、行政主導型ではなく市民協働型事業の取り組みは、地域型災害ボランティア活動の新たな展開として「社会デザイン」の趣旨に相応しく、今後の更なるかつどうを期待して<奨励賞>に推薦する。」ということです。
これは、座間市民(自治会など)、教育機関、保育機関、行政機関、商工関係事業者、介護施設、医療機関、市民活動団体、さらには自衛隊座間駐屯地、在日米陸軍(キャンプ座間)等が総力を挙げて取り組んだ成果だと思っています。授賞の後、奨励賞を受賞者がそれぞれの活動について発表を兼ねたスピーチを行いました。
本事業の大きな特徴は、訓練実施日を毎年1月23日 午前11時と「日にち」を固定したところにあります。多くの自治体では、「曜日」を固定して行っている事例が多いようです。日にちで固定すると、曜日によって変化する現象に対応できずに事業がマンネリ化する危険性があり、単なる防災イベントで終わる危険性があったと思います。
結果、事業スタートから5回の訓練での実績は、昼間人口の約50%を超える「事前参加登録数」を数えています。つまり、座間市の半分の人は、「緊急地震速報」が流れると同時に「わが身と家族の安全の確保」ができるということです。
さらに、2014年度から付加した「シェイクアウト・プラス1訓練」においては参加者の工夫によって年々と取り組み内容が進化しています。2016年度の土曜日(閉庁日)の訓練では、座間市は「フルスケール訓練」を計画し、職員参集訓練と、地域防災計画で各セクションに与えられている災害初動任務を実際に実行するなど「リアルな訓練」に取り組みました。併せて、小田急電鉄と協力して、「災害時駅頭混乱対応訓練」に次いで「帰宅困難者誘導訓練」にも取り組み、ZSVNは帰宅困難者に対するサポートとして「エイドステーション開設・運営訓練」を行いました。
このような、活動の内容をパワーポイントを使って訓練状況の動画や写真で紹介しました。
出席された関係者の方々は、この取り組みに大きな関心を持たれたようです。
その後、大賞を受賞された花田教授による基調講演が行われました。
先生は、水俣病の研究ではなく、水俣病がもたらせた患者、自治体、企業そして国(当時の厚生省並びに環境庁)の対応さらに、何次にも及んだ訴訟問題のもたらせた社会的な影響や地元水俣の風土、高度成長政策がもたらした負の遺産である各地の公害問題との関連から社会学の側面から、このような横断的、総合的な課題を研究し続けてきています。
その研究活動の基本は、すべて現場主義に基づくフィールド活動が基本になっているようです。現場を見ないで政府の委員となって患者の判定を行う研究者に対して違和感を持っておりその構造が時代に対してどのような結果をもたらすのかという側面からも研究を重ねてきたようです。
「水俣学」という在り方には、「学問」という体系をなさないではないかという意見もあるようですが、学問自体が時代の中で変わってゆく必要があるのではないかという見地から、モード1の学問分野(従来からの縦割りに体系化された学問)に対して、モード2の学問分野という視点から融合的に研究が行われなければ、結局は学問が学者のための、学会のためのという閉鎖的なままで終わることになり「役に立つ」ことという学問の本来の存在価値を見失うのではないか。このような危機を乗り越えるためにも「水俣学」が必要だと考えられたように感じました。
かつては「社会学」という分野はなかった学問であり、それぞれが人類学とか経済学のように独立していてそれぞれが狭義の事象について研究を続けてきた歴史がありました。
しかし世界全体が「総合的な視点」でなければ眼前に現れる事象を解決できないというようになり人間と環境、人間とその行動などを関連付けて見てゆかなければ解決できない課題があることから学問分野を横から串を刺して関連付ける中から「社会学」が生み出されてきたように感じました。水俣病を医学的に分析するだけならば、被害者の救済は医学的分野の原因と結果という枠組みの中にとどまってしまうことを危惧され、となれば被害者二世(胎児水俣病)も救済されないことになる。また、水俣病を考えるにあたっても、患者対企業と国の連合組織という対決だけでは解決できず、漁民、工場労働者等も参画する協議体の中から解決策を求めなければ「怨念」だけが残るのではないかという思いがあったのではないかと感じました。
このような、総合的、多眼的、俯瞰的な学問が今後の時代を創造するのかなと浅学の私には心に残りました。
先生ご自身は、2016年4月の熊本地震で被災され自宅も全壊して現在もみなし仮設住宅にお住いになりながら教壇にお立ちになられているようです。また、災害時に障がい者を受け入れる避難所がないことがわかり、大学の中に障がい者用の避難所を開設しピーク時には約60名の障がい者を受け入れて避難所運営者として活動をされたこともお話にありました。防災という事象も総合学であるように感じ取り組まれたのではないかと推察しました。その意味からも、現場主義に徹した研究者であり教育者であることを感じました。
表彰式後、パーティーがあり皆さんと交流をさせていただきましたが、座間市とZSVNの協働事業については興味を持たれている方々が多く、質問をいただきました。座間市並びに私たちの活動の方向性は誤っていなかったという自信をもって会場を後にしました。
このような賞をいただけたのも市長をはじめ担当部課の職員の方々のお力、そして私たち会員の努力の積み重ねだと思い関係者に感謝の意を申し上げたいと思います。
ありがとうございました。
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