総合的な学習の中の防災教育のお手伝い

 2022年の座間市小学校教育研究会主催の「総合的な学習研究会」から今年度もお声をかけて頂き当番校の入谷小学校でお手伝いをさせて頂きました。幹事校の担当のK先生とは何回かの打ち合わせをさせて頂き、今年度は体験的な学習にしたいとの要望を頂き、以前ゆとり学習の頃やらせていただいていた「防災倉庫探検隊」の短縮バージョンで提案をさせて頂き、了承得ましたので実施しました。

参加者は市内11の小学校から27名の先生が受講するということで10月15日の、打ち合わせ会で

➀電源喪失の時

②給水停止の時

③けが人が出た時

④避難所のテント体験

の4つのパートを順番に回って学習のヒントを得てもらえればと思い準備にかかりました。

 

 ➀電源喪失は必ず起きる。多くの人はその切実さをイメージできずに「まあ、2、3日もすれば停電なんか治るよ」と多寡をくくっている人がいます。災害を学ぶとは、「イメージする力」を強くすることなのです。私たちは、防災教育というのはこの「イメージする力を育み、展開させて、備える」ことを教えることだと思いながら活動を続けてきました。

首都直下地震の座間市の揺れの想定は震度6強から震度5強程度だとされています。当然、送電施設は大きな被害が出ると想定されています。まして、国家の首都が地震で壊れるわけです。最優先は、国家機能の応急処置です。何よりも首都の復旧となり、人、モノ、資金、情報は「都」へ集中することになります。場合によっては発電所が動かなくなることもあります。この夏も、原発が停止している中で、日によっては綱渡りの給電状況です。冬も寒くなれば大変なことが起きるかもしれません。

 何時、復旧するかは予想もつきません。その時、どうやって初動期を乗り切るか?について学びました。

手で持つ懐中電灯はどこの家でもあると思います。今日は、体育館の倉庫の中の物を搬出、搬入の体験をしてもらいました。最初に手で持っタイプの懐中電灯をつけて、真っ暗闇の倉庫の中から椅子を2脚運び出す作業をしてもらいました。倉庫の中に8人ほどの先生方が入って、順番に運び出してきました。片手で懐中電灯を持っての作業は結構大変だとおもいます。

次いで、先生方にキャップライトを渡して運び出した椅子を元の場所へ戻す体験をしてもらいました。

何をどう感じたかは、先生の胸の中に納まったと思います。灯りは私たちに元気と勇気を与えてくれます。この体験を通じてどのように生かすかが楽しみです。

さらに、停電に備えるために私たちが取り組んでいる「マイ発電所PT]についても説明させていただきました。

 ②給水停止の時、一番困るのは「排泄」です。人間は今まで一度も排泄をしないで生きてきた人はいないと思います。水が停止すると、トイレは使えなくなるということに繋がります。でも、何かを準備しておけば乗り越えられるのです。家庭のトイレの便器は簡単には壊れません。であればこの便器を使って排泄をすることを考えることに結び付けて、ざま災害ボランティアネットワークが販売している「トイレパック」を用意しておけば乗り切れるはずです。さらに、仮に家が壊れてしまってもバケツやプランターがあればこれを利用する方法もあります。あったものが無くなったら何かで「代用」する知恵を教えて欲しいのです。

私たちがいま心配していることは、ウオシュレットが使えなくなります。本当に子どもたちはキチンと紙でお尻をふくことができるのかということです。我々世代は、新聞紙を切った紙でお尻を拭いてきました。果たして・・・どうなるのか先生方はどうするのか興味ある体験になったと思います。

 ③けが人が出た時、どうするかということを体験してもらいました。座間市は救急車は4台しかありません。災害直後に簡単に応援の救急車が来るとは限らないのです。病院では規模に応じて何台かの救急車がありますが、そのほとんどは自分の病院から他の医療機関へ移送するために使われます。

となった場合に、けが人に対してどのように対応するのかを体験してもらいました。

 良く担架搬送の体験をするときにわざわざ負傷者は毛布やシートの上で倒れてくれます。現実の場合には、そんなに都合よく倒れてくれません。道路に倒れていたり、廊下やコンクリートの上に倒れていることが多いはずです。このけが人を担架に乗せるためにはどうしたら良いのかということです。けが人の身体の下に毛布またはシート類を滑り込ませなければならないのです。負担が少ない方法での体位変換方法を学び、さらに毛布の上に乗せた負傷者を担架に乗せ換える必要があるわけです。担架に乗せた負傷者を運ぶにはどの方向に進めば良いのかということも大事です。まさか、階段を降りるときに頭から降ろして行くことはないと思いますが、慌てていればそんな笑い話のようなことが起きるのです。この体験は、高学年向きのプログラムだと思いますが大事なことなのです。

ここまで、3つの体験を約20分づつ行いました。

 

 次に、避難所内に張るテントの組み立てを体験してもらいました。1張りは見本で張っておきましたのでそれぞれの班で1張りづつ張ってもらいました。思ったよりも早くできました。

さて、このテントをどのような配置に並べるかということです。テントがどのような目的で配備されているかということです。2020年春から感染爆発が起きた避難所内でいかにして生活ができるようにするかということで配備されたのです。

K先生から、事前配布した「感染の中の避難所マニュアル」に目を通していた先生は早かったです。感染を防ぐためには、なるべくお互いの距離を離すことです。となれば、入口を対面にしないということです。

また、座間市では、テントとテントの間は30センチ開けることにしています。これは熊本地震の避難所で支援活動して中からの学びを活かした方法です。テントは布です。ちょっと触れば動きます。熊本地震の益城町の避難所は薄い布でできたカーテンで仕切っていました。隣とはこの布1枚が仕切りでした。隣で着替えをする時に腕が当たれば、隣人の居住区域にその腕が出てくることになり、強いストレスになり、いさかいが絶えなかったとの話もありました。テント同士の前との間隔が1メートル(車いすが通れる)として体育館の壁面とは70センチを離すこと…これは壁伝いに歩かなければならない人のためです。

皆さん真剣に聞いてくれました。最後に、避難所内のトイレは完全に封鎖するということも話しました。これは3・11の時の郡山でのノロウイルスのことで学んだことをお伝えしました。

 

 これで、2時間の授業を終えました。先生方は大学でこのような体験学習を体験していないと思います。

最後に「お家避難」のことを話して終わりました。

避難とは「災い」を「避ける」ということをしっかりと理解してください。そして、この学習の一番最初に戻って、「人は体験したこと以上のことはできない」ということで結びました。

 

 今日の学習が、役に立てばうれしいです。児童は本当によく吸ってくれます。そして記憶も確かです。だから防災教育は、小学校時代に計画的に進めていただければとお話をさせて頂きましたが、残念ながら総合的な学習の時間が、他の科目に浸食されている現実を見ているだけに先生のご苦労もわかっています。でも、少しでも時間を積み重ねて「総合的な学習の時間」を作り出して「後悔しない」学びを作って欲しいと思いました。ご苦労様でした。