神奈川県立座間高校には「防災部」があります。この学校は防災に関する活動が活発です。
さて、今日は,全校一斉の防災訓練が実施されました。それが終わった12時30分ごろから関係者が集まり始めて「災害食」の昼食を食べました。
今日の地域連携訓練は、座間高校防災部と生徒会、有志生徒を中心にして、隣接する座間支援学校、座間市立入谷小学校の教育関係者と地域の自治会、社協、青年会議所、そして座間市危機管理課、上下水道局などの職員の方々が繋がって災害のことを考えるという企画でした。防災担当のB先生が中心となって私どもに運営の依頼がありました。
13時から活動プログラムが始まりました。今日のテーマは「災害時の排泄、給水」を考えるということで「うんこ防災」というテーマで行いました。私たちが被災地で遭遇したエピソードを交えて、実技、講義を織り交ぜて行いました。
まず、災害を考えるということで私たちが、提唱している「頑張らない防災」について話をしました。「防災、防災」と声高に言う傾向が強くなってきています。毎年、1月と9月ごろにその傾向がみられます。○○が選んだ防災グッズの広告やコマーシャルが流れます。でも、それって何かに踊らされているような感じがしてなりません。
本当に必要なのは、私たちは市民として日常生活の中に静かに「減災、発災対応」の行動を摺りこませるかにかかっていると思います。
最近は、新しい家が増えてきています。耐震強度にはばらつきはありますが建築確認を取る以上は「新耐震基準」を満たしています。
海外の地震被害のように直ちにクラッシュする家屋は少ないです。そこで、「避難」という言葉を理解して欲しことを伝えました。避難とは、「難」を「避ける」ことです。「災害だそれ避難所へ行こう」ということではなく、多少壊れているかもしれませんが、何んとか家屋中に安全なスペースを確保して、発災初動期の72時間を過ごすことを考えた方が災害からの肉体的、精神的負担が軽減するということを説明しました。
可能餡限り家を強化して、日常の生活の中に発災に備えて
①出す(排泄)、
②飲む(飲料水)、
③食べる(食事)、
④電気の自助(灯りと情報)、
⑤大判厚手のブルーシート、
⑥ガラ袋と皮手袋の「6つの備え」を滑り込ませておけば、慌てないで「おうち避難」が出来るのです。
それらを前提に、本題の「排泄(うんことおしっこ)」の話に進みました。災害が起きると、停電が起きることは過去の災害から学んでいます。電気のない生活、インフラが破壊された世界を想像してもらいました。つまり、水が供給されないのです。その時、学校や家庭のみならず、被災地全体に「排泄障害」が発生します。私たちが被災地に入って「排泄障害」がもたらした幾つかの体験を話しました。排泄行為は、絶対に耐えられません。しかし、人々はこの事実から眼をそむけているのです。ここで、次のプログラムが待っているので中断して
会場を屋外に移して隣接する入谷小学校の校門近くにある「災害用飲料貯水槽」を使った実習をしました。座間市は、市内の学校の校庭に、50トンクラスの非常用貯水槽を設けています。(中原小学校を除く)
座間市上下水道局の職員の方が準備してくれた「非常用貯水槽」を使った手押しポンプについて説明を受けて水をくみ上げました。ほとんどの生徒たちは「手押しポンプ」を見るのも触るのも初めてだったと思います。自分の手で水を汲みだして運搬用の容器に入れました。「水18リットルが何キロですか?」と質問しましたが答えが出なかったのがおかしかったです。
ここで、私から職員の方へ「呼び水」について質問をしました。先生方の中でも「呼び水」という言葉を知らない方もおられました。ちなみに、入谷小学校のポンプは呼び水を使わなくても稼働するようになっています。
生徒自身がくみ上げた水を、手分けして座間高校の校舎脇の空き地に運搬しました。
今日は、丹沢山塊からの風が強く寒かったのですが少しでも暖かな陽が当たる場所で実技に移りました。
私から、皆さんの仕事は、この水を小分けにして被災された方々で水に困っている住民の方のもとへ運ぶ活動をしてもらうことになると思う。「それでは、この水を用意したペットボトルに分けて下さい」と課題を出しました。
すると一人の生徒が前に出てきて給水用のポンプを使って手際よく取り組んだのに感心しました。
大事なことは、運んできた水を汚さないこと、水は均等に配分すること、手分けをして運ぶこと、高齢化社会の中では君たちの力な無ければ命を繋ぐこともできないことを話しました。
寒さも強くなってきたので、排泄の体験は屋内で行うことになり会議室に移動して学校に備蓄してある非常用トイレを使って組み立て体験をしました。生徒は先生から提示された非常用のトイレの組み立てを始めました。集まって説明書を読んでああだこうだと言いながら組み立てました。実際に座ってもらいました。皆で顔を見合わせて「にやにや」していました。
ここで、用を足した後の処理の話になります。一人ひとりが排泄用の袋を1個づつ使っていたら物が不足する。従って、家庭内は当然のこと、学校でも同じ袋の中に排泄すること、排泄物がある程度溜まってきたら、便袋の中に収納して空気を抜いて密封して保管すること。決して、ごみ収集パッカー車には入れないことを話しました。一つ一つ真剣に聞いてくれました。
避難所のトイレは、女性3に対して男性1の比率で分け合うことが、共通のルールとして浸透し始めていること、しかし、発災直後は、十分に補給されないので場合によっては50人に1基というように混雑になる状況が起きてしまう。従って、清掃をこまめにしないと衛生状況が劣化して感染症が蔓延することになるので、過去の例ではおおむね
3時間サイクルで清掃をすることで何とかトイレの環境が維持されることを話しました。おそらく君たちもこのような日常ではやったことのない活動に参加することになることを伝えました。
ここで、私どもの会員であるT看護師から避難所における感染症について、動画を交えて話がありました。
例として取り上げたのが、3.11の時の福島県郡山市の大規模体育館で起きた「ノロウイルス」の話でした。感染症の厄介なこと、感染力が強いこと、下痢、嘔吐によって体力が消耗すること。何よりもノロがもたらす「汚物の処理」の的確さが求められることについて話しました。
最後に、危機管理課の職員の方から、災害時には行政も思うように動けないことを知って欲しい。そこで頼れるのは今日のような「地域連携」の活動だと思う。今日のような活動を続けて欲しいことを期待しますという話がありました。
まとめに、私から座間高校の先進的な取り組みは地域に大きな影響をもたらすと思う。
実は、12年前に発災した東日本大震災の時に、ざま災害ボランティアネットワークが市民の方々から募集した「被災地支援物資」の集積場所としてこの場所をお借りしたご縁でつながりができた。
当時、この学校の生徒会長だったT君が私どもの活動会員として所属していた。彼に、物資を仕分け、整理する作業スタッフとして生徒会から運動部に働きかけて3日間、作業員のシフトを考えて欲しいと依頼した。彼は、すぐに運動部に働きかけてシフト表を作ってくれて市民ボランティアと共に、約18,000枚のタオル、600枚の毛布を仕分ける作業をしてくれた。
当時は運搬する輸送用のトラックの燃料も入手できにくく、整理が済んだ荷物を被災地へ運ぶこともできずに学校の教室の中で保管してもらった。結局、4月、第1週ぐらいに運送会社から車の手配が出来たということで、整理した段ボールを大型トラック2台に積み込む作業をしたが、新学期が始まった直後にもかかわらず生徒会の有志の生徒が手伝ってくれ無事に被災地へ送り込むことが出来た。今日も、こうして話をしながら当時のことを思い出している。
その後、県の防災教育指定校として宿泊を伴う訓練などを行ってきたが、私たちもお手伝いをさせていただき今につながっている。君たちの活動は、絶対に今後役に立つ。ぜひ「助ける人」になって欲しいということを話して終わりました。
最後に、担当のB先生から、今日の学びについて分析指標の話がありました。
今日の学びが「行動化」されればこの活動は決して無駄にならないという話がありました。
これは、私たちの活動のPowerPointの最後に、書いています、「行動化されなければあなたの明日の状態は、今日と同じです」という考え方に通じることにつながったわけです。
本当に充実した減災・発災対応の普及活動になったと思います。共に学べたことに感動しました。
ありがとうございます。
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