
2024年12月24日 2学期の終業式の日です。
座間高校は、例年終業式の午前中に、全校参加の「実践的防災訓練」を行います。そして、生徒の多くが下校する中で、生徒会防災委員会のメンバーは、昼食に続いて防災授業が行われました。12月のこの時期なので参加者は1,2年生のみとなります。
今年度は、前半は学校の防災担当教諭によりARを活用した災害疑似体験を行いました。水害編と火災編の2班に分かれてバーチャルな世界ですが、水災害に危険性と火災の恐ろしさを体験しました。ゲーム世代だけに先生の説明を受ける間もなくバーチャルの世界に入っていました。
13時30分から、ざま災害ボランティアネットワークの担当で「発災後の3:3:3」ワークショップ(WS)を行いました。
このプログラムは災害に出会った時、いかにして災害対応のタイムテーブルを構築するか…付与された条件で、起きるであろう被害をイメージして、起こる事象に対してどのように「対応」するか、その事象は何が「原因」で起きてしまったのか、では、その事象が起きないために事前にどのような「予防」をすれば良いのかということを参加者全員で決められた時間内で考えて、整理して、結果をまとめるWSです。
今回の想定災害は、地震として、30年間の間における発生確率が70%を超えていると黄信号が点滅している「都心南部直下地震」を取り上げました。12月24日、午後14時45分に発災、マグニチュード7.3、座間市における震度は6強から5強、外気温は5度、風向きは北西の風3メートルとしました。生徒は5グループに分かれて、校舎平面図の付与された場所でその地震に遭遇したという条件下で行いました。
この想定地震が自分たちにどのような影響があるのかをイメージできるかが大切です。被害をイメージできなければ課題を解くことはできません。
「3:3:3」の初めの「3」は発災直後からの「3分間の行動」を、次の「3」は3時間までの行動を、最後の「3」は、発災から3日間の行動を考えることになります。しかし、高校生に3日間を考えることは過酷なので24時間後を考えることにしています。
授業のスタートは「災害モード」に入ってもらうために抜き打ちで「緊急地震速報」を流しました。さすが、座間市内の高校だけに瞬時に机の下に身を隠し頭、足、手を守る行動をとりました。これは、毎年1月23日午前11時に1分間の行動訓練「座間市いっせい防災行動訓練(ShakeOut訓練)」で鍛えられている成果だと思うのです。
このWSを他市の高校で行うと、瞬時に行動に移すところはほとんどなく、お互いに顔を見つめあい「もぐる?」「もぐろうか?」という照れくささを感じながら行う学校がほとんどです。
13年前に座間市にこの訓練の取り組みについて提言を行い導入するきっかけを作ったのが「ざま災害ボランティアネットワーク」です。当時は、3・11災害の直後でもあり防災訓練の取り組み促進に乗ってブームになり導入した自治体が数多くありました。
しかし、座間市ほど真剣に取り組んでいる自治体はないと聞いています。「継続は力」ということを身に染みて感じています。
そのあと、東日本大震災の仙台で撮影されたTV映像を用いた「震度6強」の揺れの映像を見てもらい今まさにこの地震の中にいるという感じを作りました。
各テーブルには時間枠に合わせた色の「付箋」を配りそれぞれ発災直後の3分間行動を付箋に書いてもらいます。
その後、3時間の間に把握された被害状況を書き出した「被災情報(状況付与)」を配ります。それを読んで「3時間」の行動を書き出します。同じように、発災後、3時間から6時間までの「被災情報(状況付与)」を配ります。配られた被災情報をもとに「24時間」までの行動をイメージして書き出します。書いていた付箋を見ると具体的な行動として書かれているもの、付与条件を無視して自分の判断だけで書いているものなどが混在していました。休憩後、WS整理用のシートが机に配られます。
メンバーが書いた「付箋」を「3分」「3時間」「24時間」とそれぞれの時間に取る行動を貼ってゆきます。メンバーの中で同じ意見は重ねて「島」を作ります。全体が張り出された時点で、シートに描かれている3分、3時間、24時間(深夜・朝・昼)の位置に発災時刻からの実際の時刻を貼ってもらいます。
つまり、書き出された行動がその時刻に行うことができるのかという判断を求めることなのです。書き出されて集められたある行動の塊「島」がその時刻に行うことができるのかどうかを再度確認するわけなのです。行動の思考を一段、時刻という視点で再確認することで災害というものは手ごわいものなのだということを感じてもらえればと思い仕掛けてあります。
さて、各グループは、与えられた「場所」で揺れを体験して、3分、3時間、24時間の時の時の流れを見てきました。では、24時間後、座間高校はどのような被災状況なのかを整理シートに箇条書きで書いてもらいました。
その被害に対して、君たちはどのような手段方法を使って「対応」してきたのか? そして、その被害が出た「原因」はどこにあるのか? 次に遭遇する災害に対して被害を最小に抑えるために必要な「予防」について箇条書きで書き出してもらいました。
災害という出来事の中で、自分たちができることが見えてきます。
例えば、耐震不足で校舎が崩れてけが人が出たような場合には、「級友がけがをした」という事象に目が行ってしまい、その時に取った「対応」について後日振り返った時に、「頭が真っ白になって・・・」という体験があると思います。「対応」を冷静に思い出すことができないケースは多々あると思います。つまり、「地に足がつかない」という状態があるはずです。
高校生にそこまで求めるのかと言われますがこのような深堀した考察ができればと思い進めました。約20分間の作業ですが、それぞれ真剣に流れを再確認しながら話し合って、記録係が書き出してゆきます。
まとめたシートをもとに、全員が前に出て発表をします。3分間の時間の中で伝えるという訓練なのです。災害時には様々な事象が押し寄せてくるわけです。その一つ一つに時間をかけて「熟議」をかけていたら助かる人も助からなくなります。消防隊員の言葉に、救出の大原則の一つに「助けたい人よりも助けやすい人を優先する」というものがあります。
社会経験の少ない高校生にとってはきつい課題かもしれません。しかし、深堀する中で得るものも多かったのではないかと思います。
全くの私見です。パワーハラスメントはあってはいけないと思いますが、今後の社会は、年々災害のリスクが高まってきます。その中で「生き抜く」ためには正しくリスクを伝えそれに対応するための能力を養わなければならないと感じるのです。私事ですが、私が自衛隊員として勤務していた時に、訓練の最中に前方から攻撃を受けるシーンがありました。その時、私は攻撃をよけるために「伏せ」の姿勢をとったのですが、瞬間、教官に後ろから蹴とばされました。そして「戦死」と宣言されました。
訓練が終わり教官からよばれました。「なぜ、蹴られたか理由がわかるか?」と言われました。私にはわかっていました。すぐそばに「水たまり」があったから避けたのです。「なぜ、水たまりの中に伏せなかったのだ」・・・と諭されました。冷静になって考えれば、水たまりは身を隠すには適地だったのです。単に顔や身体が濡れて、泥をかぶり戦闘服を洗うのが嫌だったのです。
咄嗟の行動とはこのことを言うのかと理解をしました。
危機に対峙することとはこういうことなのですが、「蹴られた」→「パワーハラスメント」だとして単純に結びつける今の社会に違和感を持っています。
今日の高校生は、この先の人生の中で必ず襲ってくる「大規模災害」の中に入るはずです。これは日本の災害史を読み解けばわかるはずなのですが、「来なければ良いな」として、上辺をなぞるような、今の防災教育の在り方に何かしらの変化を与えることができればと願いながら取り組んでいます。災害は、年齢、性別、国籍、身体の状況などを考慮することなく「公平」に私たちを襲ってきます。その時、生き残り、生き延びられなければ「ふるさと」を守り抜くことはできないと考えるのです。
あらゆるメディアは、災害のことを伝えます。SNSでも、ユーチューブなどでも身近に伝えるツールになりつつあります。
しかし、それは疑似的な体験の量を増やしてしまうのではないかと危惧しています。災害への「知識」は高まっています。なぜ地震が起きるかと問えば素晴らしい答えが返ってきます。しかし、その「知識」が身を守り生き抜く「わざ」「知恵」として行動化されているかというと、はなはだ疑問に感じています。行動化できない災害リスク対応は 結局は、今日のリスクのまま明日も同じ状態を続けることになります。否、今日よりも危機に一日、近くなるのですからリスクが高まることになるのです。このことを伝えて授業を終えました。
担当の先生からも、行動化することが大切なのだという念押しをいただくことができました。
果たして、私たちのこの思いが伝わったかは結局、私たちの授業スキルの評価がどの程度のものなのか?ということになるのだろうなと思いつつ、手伝ってくださったメンバーにお礼を言いながら解散しました。今年はこれで活動は終了です。協力してくださったメンバーの皆さん、おつかれさまでした。
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